農業バイト最終報告
先日、4週間に及ぶ農業バイトが終了した。
最後の一週間が一番楽しかった。新しいバイトの人がやってきたことが大きい。というのも、それまで私は外部の人間であった。埼玉から来たバイトの人。一番その家族から遠い人物。だから慣れてきたとは言え彼らとの間には壁が存在していた。そこに新たに外部の人がやってくると、私は迎える側の人間、相対的に内側の人間になる。仕事を教えたり、家の案内をすることで、私はより家の人たちに近づいたような気がしていた。実際分かることも増えたし、新人さんに比べれば仕事はできるから、頼られることもあった。そして、新人さんに負けないように頑張らなければいけないという意識もできた。
ライバルの存在は重要なんだと思った。負けず嫌いなので、同じくらいの実力で戦う仲間がいると頑張れる。一人だけ、もしくは周りと圧倒的差があると、マイペースさが顔を出して一気にのんびり屋になってしまう。そして追いかけるより追われる方がやる気が出るタイプである。自分一人でも頑張れる心の強さがほしい。
そんな感じで家の人と少し距離が縮み、仲良くなった気がして、仕事が前より楽しくなったタイミングで最後の日が来てしまった。ぶっちゃけもう帰りたいと思っていたが、いざ帰るとなると今までの思い出が蘇って涙が出た。もともと別れには弱い人間だ。おばあちゃんの家から帰る時とか卒業式はもちろん、教育実習生がいなくなる時とかでもほぼほぼ泣いていた。そんなやつがひと月いた家から去る時に泣かないわけはない。この家の人がもっと嫌な人だったらよかったのにとか、嫌だった所とかを考えてショックを和らげようとしたがあまり効果はなかった。お父さんの変な科学の話とか、お母さんやパートのお姉さんとの適当な会話が楽しかったんだなと気付いてしまった。帰る前日は隠れて泣いていた。
私は感情を素直に口に出すのが苦手で、行き場をなくした言葉達が心の中で渦巻いて涙となって出てくるような感覚。帰りたくないって素直に言えたら楽なんだろうな。泣くのが恥ずかしくて涙をこらえようとすると余計涙と嗚咽が出てくる。でも、話すと自然と落ち着いてくるということがちょっと分かった。
最後の日も変わらずキャベツを切り、部屋の掃除をし、犬や猫にさよならを言い、飯を食って家を出た。最後挨拶する時泣いていたのは帽子とマスクで気付かれていないことを祈る。
なんとか体調を崩すこともなく、大きな怪我をすることもなく、無事4週間を終えることができてよかった。普段の生活とはまったく異なる世界を経験でき、有意義だった。
振り返って思うのは、他人と暮らすことは大変だということ。赤の他人と暮らしてみて初めて自分の神経質さに気付いた。臭いに敏感なのは分かっていたが、床のゴミとか、食器の汚れとか、衛生面にかなり気を遣っていたのだと分かった。あと、自分の家はかなりきれいな方なのだと分かり、母に感謝した。
衛生面では神経質であるが、それ以外の面でルーズな部分は多々あるのだと思う。全面においてA、というような性格はあまりなくて、この部分だとAだけどこの場合はB、というように、一貫性がないのもまた人間なのだろうと思う。
大変と言ってもひと月も暮せば大抵のことは慣れる。そして、少しくらい迷惑をかけても相手はなんとも思っていないことが多いのではないかと思った。遠慮や気遣いはもちろん必要だが、少々図々しくてもいいのかもしれない、それを許し合えるのが家族なのかもしれないと思った。
他にも色々思ったことはあるが、長くなりそうなので別記事にしようと思う。ひと月の思い出を写真で振り返って終わりにしたい。
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